書籍紹介

NHK子ども科学電話相談の本

『鳥スペシャル!』『昆虫スペシャル!』『恐竜スペシャル!』
シゼンノ編集部

  


NHK子ども科学電話相談とは

 

NHKラジオで毎週日曜日の午前1005分~1150分、1時間45分間という長尺で放送されている番組がある。

NHK子ども科学電話相談』だ。

(元々は夏休みなどの特別番組だったが、2019年からレギュラー化された。)

自然史ファンの間ではよく知られている人気番組である。

 

番組では毎週、第一線で活躍する研究者が3人登場し、未就学児や小学生(まれに中学生も)が番組中に電話で質問した内容にその場で答える、という形式で番組が進む。

 

子ども達から寄せられる質問は、日々の生活の中での気付きのようなちょっとした疑問から、とても根源的な深い質問までバラエティに富んでおり、研究者たちはその答えを、子どもにも分かるようにとてもとても平易かつ丁寧に説明する。

この説明を聞いていると、大人でも「ああ、そういうことなのか!」と驚きをもって理解に至ることも多いのではないか。

 

このような良質なコンテンツであることから、大人のリスナーも多い番組である。

 

ちなみに、今この原稿を書きながら番組を聞いているのだけれど、「宇宙が生まれる前は何も無かったというけれど、何も無いというのはどういうこと?」という壮大な質問に対して、「空間も時間も無いということ」という話からはじまり、「空間とは何か」「時間とは何か」という説明を、研究者が複数人がかりで回答している。

もはや科学を超えている話題も扱うことがあるのだ。

 

そんな番組のエッセンスを詰め込んだ本が、今回紹介する『NHK子ども科学電話相談』の本3タイトル『鳥スペシャル!』『昆虫スペシャル!』『恐竜スペシャル!』である。(『天文・宇宙スペシャル!』も既刊だが、自然史の範囲を超えるので、ここでは取り上げない。)

 

 

本書の監修者(番組での回答者)

 

今回紹介する『鳥スペシャル!』『昆虫スペシャル!』『恐竜スペシャル!』は、「スペシャル!」というだけあって、各ジャンルに関する質問とその回答をピンポイントで集めた内容になっている。

 

各「スペシャル!」の回答者のラインナップは以下の通り。

 

【鳥スペシャル!】

川上和人 ・・・ 総合森林研究所 野生動物研究領域 チーム長

上田恵介 ・・・ 立教大学名誉教授/日本野鳥の会 会長

 

【昆虫スペシャル!】

丸山宗利 ・・・ 九州大学総合研究博物館准教授

清水聡司 ・・・ 大阪府箕面公園昆虫館副館長

久留飛克明 ・・・ 非営利団体昆虫科学教育館館長(元・大阪府箕面公園昆虫館館長)

 

【恐竜スペシャル!】

小林快次 ・・・ 北海道大学総合博物館教授

田中康平 ・・・ 筑波大学生命環境系助教(元・名古屋大学博物館日本学術振興会特別研究員)

 

研究における実績も豊富で、かつ、普段からアカデミアの外に対する普及・啓蒙(アウトリーチ活動)にも熱心な、錚々たるメンバーである。博物館関係者が多いのも、博物館がアウトリーチ活動の最前線であることと関係があるに違いない。

 

 

番組を彷彿とさせる構成

 

ラジオ番組『NHK子ども科学電話相談』が基本的には子ども向けの番組であることを受け、本書も子ども向けのページ構成になっている。

文字は大きく、漢字にはすべてルビが振られている。

 

本文は質問と回答で構成されているが、番組の雰囲気を再現するためにか、回答もすべて話し言葉で書かれているし、質問者の子ども達のリアクションも随所に挟まれている。

(番組ファンなら、本書を読んでいると脳内で番組が再現されるに違いない。)

 

ただし、このように子ども向けの番組を元に作られた子ども向けの書籍であるからといって、内容が薄かったり、レベルが低かったりということでは決してない。

この記事の冒頭でも触れたとおり、番組でも、ハッとするような質問と、それに対するキレの良い回答が飛び交っているのだ。その書籍化である(しかも、選りすぐりなわけで)。面白くないわけがない。

思わずニヤリとしてしまう箇所が多々散りばめられている。

 

少し話が逸れるが、図鑑なども、児童書のコーナーに置いてあるような図鑑こそ、実はそのジャンルの最新の研究成果が素早く反映されるものである。

実は児童書恐るべしなのだ。

 

その法則は、本書にも該当する。

子どもに読ませたいのはもちろん、子どもだけに読ませておくのは勿体ないのが本書である。

 

 

余録

 

ラジオ番組「NHK子ども科学電話相談」は、NHKHP上で聴き逃し配信をおこなっている他、番組を文字に起こした「読むらじる」で、記事として読むこともできる。

今回紹介した書籍も良いが、よりライブ感を味わうならば、この「読むらじる」もオススメだ。




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