書籍紹介
みんな大好きミュージアムグッズ
シゼンノ編集部
博物館を訪れた際の楽しみの1つに、ミュージアムショップでグッズを見ることも挙げられるだろう。
特に、そこでしか買えないようなオリジナルグッズがあったりすると、思わず財布の紐が緩むのである。
そんなミュージアムグッズのみにフォーカスした珍しい本が、今回ご紹介する『ミュージアムグッズのチカラ』『ミュージアムグッズのチカラ2』(大澤 夏美 著)である。
まとめての紹介となったのは、この2タイトルがコンセプトを全く同じくしつつ1年と経たずに立て続けに出版されたという、その勢いも踏まえてご紹介したかったためである。
もちろん、そこには勢いだけではなく、著者のミュージアムグッズに対する深い知見と愛が読み取れるのだ。
なぜミュージアムグッズなのか
本書のタイトルだけを見ると、サブカル系ライターが思い付きで書いた企画モノかのような印象を抱く(失礼)が、実はそんなヤワな本ではない。
著者は、大学院では博物館経営論の観点からミュージアムグッズをテーマに修士論文を書き、現在は「ミュージアムグッズ愛好家」の肩書きで活動する筋金入りのガチ勢である。まさしく「ミュージアムグッズ愛」の人なのだ。
そんな著者が、全国のミュージアム(博物館、美術館、水族館、動物園など)から選りすぐりのオリジナルグッズを選出して紹介しているのが本書である。
それも、ただの通りいっぺんの紹介に留まらない。全てのページから明らかな本気さが伝わってくるのだ。
なんといっても、ガチ勢ならではのウンチク、博物館経営の観点を含めた論評がずらりと並び、加えて、いくつかのミュージアムグッズについては、そのグッズの販売元であるミュージアムに対して企画・制作に関するインタビュー記事まで収められている。
ただし、前述のとおり本書に収められているのは自然史分野のミュージアムばかりではない。歴史・民族分野や美術分野なども満遍なく取り扱っているため、自然史分野は水族館や動物園を含めても全体の3分の1程度である。
が、それでも本サイトで紹介する理由は、やはりその企画・制作に関するインタビュー記事が非常に興味深いからである。
自然史分野については、インタビュー記事が掲載されているのは2タイトル合わせて以下の5施設だ。
・伊丹市昆虫館
・大阪市立自然史博物館
・地質標本館
・JT生命史研究館
・神流町恐竜センター
これらの施設はいずれもメディア露出も多く人気の博物館だが、その一方で、国立の博物館のように予算が潤沢なわけではない施設も多く、グッズの売り上げが施設経営の命運を握っている場合もある。
そのような環境下で、各施設がどのような思いでオリジナルグッズを企画・制作しているのかについて掘り下げた記事は、他ではなかなか見かけない。
自然史博物館ファンとしては、この5つのインタビューを読むためだけでも、本書を購入する価値があるのではなかろうか。
ミュージアムの運営費用の捻出は、深刻かつ重要な問題
実際、多くの博物館の経営状態は非常に苦しく、ギリギリの予算(もしくは、それを下回る予算)でなんとか運営しているケースも非常に多い。
参考までに、本書で「立体サナダTシャツ」が紹介されている目黒寄生虫館だが、以前本サイトでも取材させていただいた際、運営費用は「寄付」「資産運用益」「グッズの売上」の3本柱で賄っていると伺っている。(目黒寄生虫館は入館料が無料なので、その分の収益が発生しない。)
このように、グッズの売上は博物館運営上、非常に重要な場合も多い。(自然史好きの皆さんには目黒寄生虫館のオンラインショップも是非活用して欲しい。)
もちろん、目黒寄生虫館だけでなく他の博物館でもオンラインショップを設けている場合も多々あり、本書で紹介されている施設でオンラインショップを設けている場合、そのURLも掲載されているので広く活用してほしい。
余話
ちなみにシゼンノの代表は、フィールドでは手ぬぐいを常用しているため、訪れた博物館でオリジナルの手ぬぐいを見かけると買わずにはいられないそうだ。
「手ぬぐいは、タオルみたいに嵩張らないし、下手な速乾生地よりも速乾だし、いざという時には包帯や止血帯代わりにもなる優れもの。もっと世の中で広く使われるようになってほしい。」(代表・談)
2022年06月22日
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