博物館

全ての人に、高尾山の自然に触れてもらいたい

第10回 TAKAO 599 MUSEUM(後編)
シゼンノ編集部

前編では、TAKAO 599 MUSEUMの成り立ちと全体像についてお話しした。

今回は、具体的な展示内容や取り組みを紹介することによって、TAKAO 599 MUSEUMが目指す姿を浮き彫りにしていきたい。

(取材日:2022713日)

 

 

まずは標本展示について

 

前編で触れた、覗き込むように設計されている展示台では、高尾山の地形、代表的な植物や昆虫などの標本が展示されている。

特に草木や蘚苔類については、透明な樹脂に封入された美しい標本が規則正しく並べられている。


 

これらは、高尾山の多様な動植物の中から厳選された、実際に高尾山を歩いている時にアイキャッチとなるものたちだ。

ここに展示されている動植物は、高尾山の生態系から考えれば非常に限られた種ではあるが、他方、ここに展示されている種をしっかり覚えてフィールドに出れば、それまで単なる「花」「木」「トンボ」「チョウ」でしかなかったものが、例えば「ハナネコノメ」「ホオノキ」「ルリボシヤンマ」「オオミズアオ」といったように、一気に見分けがつくようになったと感じることだろう。

 

展示室のさらに奥には、壁一面を使って哺乳類や野鳥の剥製が展示されている。


もちろん、これら剥製の動物たちも、高尾山でよく見られる動物たちだ。

特に野鳥については、双眼鏡片手に高尾山をウロウロすると、特に冬場は驚くほどよく見ることができる。高尾山は非常に優れたバードウォッチングスポットでもあるのだ。

 

この壁面展示(NATURE WALLという名前だ)では1時間ごとに、約7分間と5分間のプロジェクションマッピングが交互に投影され、四季折々の動物たちの生活や草木の移ろいの様子をとても美しい映像で楽しむことができる。


 

また、これらの常設的な展示のみではカバーできない各種動植物などについては企画展示において取り上げるなどの工夫がなされている。

 

 

高尾山に登る前にも、登った後にも

 

実は、TAKAO 599 MUSEUMの開館時刻は通常の類似施設に比べて早く、なんと午前8時だ。

これが意味するのは、よほどの早出でない限り、高尾山に登る前に立ち寄ることができるということである。

実際、高尾山に登る前には、TAKAO 599 MUSEUMに立ち寄ることを強くお勧めしたい。

 

というのも、受付近くの掲示板には、その日の見どころ(開花情報などの動植物関連情報)や、ルート情報(通行止めや危険箇所の注意喚起など)が毎日詳しく書き込まれている。


これは、高尾山の山頂にある高尾山ビジターセンターとも連絡を取り合い、互いに情報交換をしながら更新している情報なので、入山に当たっては是非参考にしたいものである。

 

また、下山後にも是非立ち寄りたい。

山中で見かけた動植物について、展示標本と見比べたり、常駐する学芸員さんに尋ねたりするなど、学習の機会を得られるのも嬉しい。

 

「日本の植物学の父」と言われた植物学者・牧野富太郎は「雑草という名の植物は無い」と言った(昭和天皇が引用した言葉としても有名)が、フィールドで草木や虫の名前が分かるようになると、自然をより身近に感じるようになる。

そういった意味でも、TAKAO 599 MUSEUMで1つでも名前を覚えて高尾山のフィールドを楽しみたいものである。

 

 

全ての人に高尾山を感じてもらうために

 

と、ここまで、高尾山に登ることを前提に話を進めて来たが、必ずしも登らなければならないというわけではない。

高尾山に登れない、登りたくない、という人にとっては、ここTAKAO 599 MUSEUMが高尾山の自然との接点となるのだ。

 

例えば、TAKAO 599 MUSEUMで高尾山の自然を感じて、そこまでで終わりにするのも良し、気が向いたらケーブルカーで上がれるところまで上がってみるのも良し、いろいろな楽しみ方があって良いのである。

TAKAO 599 MUSEUMが目指すのは、どんな属性の来館者にも楽しんでもらえる、全年齢・全属性対応型の施設だ。

 

全属性ということでいえば、日本語を母語としない来館者へのケアも万全だ。

今はコロナ禍の影響でまだまだ外国人観光客が来日しにくい状況ではあるものの、観光客以外でも日本語を母語としない人はいる(日本に住む外国人の方々など)。

観光客や在日外国人のみなさんが不自由無くTAKAO 599 MUSEUMを楽しめるよう、また、TAKAO 599 MUSEUMを通じて高尾山を楽しめるよう、多言語のパンフレットが常備され、また、英語のできるスタッフが常駐している。

 

TAKAO 599 MUSEUMは誰にとっての「好奇心の入口」にもなれるよう、準備を万端に整えているのである。

 

 

ミュージアムショップも充実

 

デザインに優れたTAKAO 599 MUSEUMだけあって、ミュージアムグッズもスタイリッシュなものが多く、オリジナルの雑貨の数々は、普段使いにも違和感の無いものばかりだ。

ステッカーだけでも10種類以上展開されているので、TAKAO 599 MUSEUMを訪れた際には是非覗いてみてほしい。

 

(了)


2022年08月10日
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