フィールド

三浦半島の最南端は、見て良し、歩いて良しの露頭パラダイスだ

フィールドレポート 第3回 神奈川県三浦市
シゼンノ編集部

岩礁帯の海岸は、日本中いたるところにある。

が、地層を観察できる露頭を伴う岩礁となると、どこにでもあるわけではない。

今回は、そんな露頭をお腹いっぱい見て回ることのできるスポット、神奈川県三浦半島の南端部分の海岸についてレポートしたい。

 

(取材日:202262日)

 

 

三浦半島の最南端とは

 

三浦半島の南部の露頭というと城ヶ島の海岸が有名だが、今回紹介するのはそこではない。

一般的な知名度では城ヶ島に及びもつかないが、地形のダイナミックさと、延々と続く美しい互層を愛でるならば、半島最南端の海岸線こそがおすすめスポットだ。

 

下掲の地図は三浦半島の南端部分だ。

左下に城ヶ島があるが、今回は赤枠部分の話である。


国土地より。赤枠はシゼンノ編集部にて追記)

 

赤枠の部分を拡大したのが下の地図だ。


国土より)

 

今回紹介するのは、上掲の地図でほぼ中央に位置する毘沙門湾を挟んだ、東西に伸びる海岸線の道である。

これは、神奈川県が整備した「三浦岩礁コース」の一部なのだが、満潮になれば水没してしまうこともある道で、それだけに、波の侵食を受けたダイナミックな地形も楽しめるルートである。

 

なお、このレポートではハイキングの楽しみ方ではなく、主として地質や地形の紹介をしていきたい。

 

 

波に侵食された地面

 

このあたりの地層は三浦層群三崎層と呼ばれるもので、スコリア質の凝灰岩と凝灰質のシルト岩との互層を主としている。

地層が傾いているため、地面に規則正しく地層が現れている。

この黒い岩はスコリア質の部分で、粗い粒の固い岩だ。

このため、波の侵食の中で残され、場所によってはキノコの傘のような残り方をしているところもある。


 

シルト岩のほうは波の侵食を受けやすいので、所どころでタフォニが見受けられる。


 

また、柔らかいシルト岩に選択的にポットホールが形成された結果、ポットホールが規則正しく並んで現れるという、ちょっと不思議な光景も見られる。


 

なお、上掲の現場写真はすべて、干潮に近いタイミングで撮影したものである。

潮が満ちれば、これらは全部海面下となる。

 

 

岸壁の地層・地形

 

もちろん、波に侵食されるのは地面だけでない。岸壁もだ。

つまり、海食崖である。


地層の傾きそのままに、地面との連続性が観察できるステキな海食崖である。

 

近づくと、スコリア質の層が波をブロックしていることがよく分かる。


 

海食洞もあちらこちらで口を開けている。


 

地質に興味が無い人でも、このダイナミックな地形には心が躍るだろう。

ましてや、地質ファンならなおさらである。

 

 

小断層も

 

三浦層群三崎層はプレートからの圧迫もあって、地層が褶曲したり、小断層が多数発生したりと、地球の営みに思いを馳せるにも非常に良い場所である。

 

下の写真のような、はっきり分かる小断層も至る所にあるので、これらもこのルートの楽しみのひとつだ。


 

 

注意事項

 

実際にここを訪れる場合、いくつか注意すべきことがある。

まず、地層を楽しむなら干潮時に限るということだ。

先にも述べた通り、上掲の地面は潮が満ちると水没する。それでは十分に観察できないので元も子もない。

このため、訪れる日時の潮位を事前に確認することを強くおすすめする。

 

潮位予測は海上保安庁のHPで確認できる。

https://www1.kaiho.mlit.go.jp/JODC/marine/umi/tide_pred.html

 

また、安全上の理由から、海が荒れている時は避けるべきである。

 

なお、現地へのアクセスについては、前出の三浦市のサイトも参照されたい。

http://www.city.miura.kanagawa.jp/kankou-info/haikinng/syoukai.html

 

 

余話

 

この原稿を書いている20228月現在、神奈川県立生命の星・地球博物館では、特別展『みどころ沢山! かながわの大地』展が開催されている。(2022116日まで)

この展示の中には、三浦層群の詳しい解説・展示もあり、また、今回紹介した地域で採取された岩石なども展示されているので、ぜひ足を運んで欲しい。

(了) 


2022年08月31日
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