書籍紹介
羨ましすぎる学校施設のフォトブック
シゼンノ編集部
成城学園恐竜・化石ギャラリーとは
東京都世田谷区にある成城学園は、幼稚園から大学までが同じ敷地内にある、言わずと知れた伝統校である。
この成城学園には恐竜・化石ギャラリーという、旧校舎を改造して化石の展示に特化した施設がある。そこにはティラノサウルスの頭骨や首長竜の全身骨格標本を含む40点以上の化石が常時展示されており、学園に通う児童・生徒たちの学習に供されている。(原則として一般公開は行っていないが、不定期に一般公開を行うことがある。)
展示されている化石標本は成城大学の卒業生である十津守宏氏の寄贈である。(参照)
(ちなみに、十津守宏氏のコレクションは佐賀県立宇宙科学館にも収蔵されている。(参照))
この寄贈された化石標本をもとに、総合監修に国立科学博物館の真鍋真氏を迎え、2020年に開設されたのが恐竜・化石ギャラリーである。
そこに展示される多くの化石標本は一部レプリカも含まれるものの、多くは実物標本であり、非常に貴重なものも多い。その貴重な標本を学外の者はなかなか目にすることができないのは残念だが、実は、展示されている標本のほとんどを掲載したフォトブックが電子書籍のみで出版・販売されているのだ。
それが今回ご紹介する電子書籍限定の『成城学園恐竜・化石ギャラリーデジタルフォトブック「IMAGINE BOOK」』である。
どんな本なのか
本書は「フォトブック」というだけあって、写真集のような本である。ほとんどのページが、化石標本や、それを展示している展示室の風景の写真で構成されている。
いわゆる図鑑との大きな違いは、解説の少なさにある。
本書での文字情報は、時代背景などの必要最低限の大枠の解説に留められ、個別の化石標本についての詳しい解説は記されていない。個別の化石標本についての文字情報はほとんどの場合、種名、分類、産地、生息年代区分、部位、推定全長に限られている。これは、実際の展示の場でも同じだ。
公式HPによると「恐竜・化石ギャラリーは「IMAGINE」をコンセプトに、子どもたちの知の探究心を刺激する教室」であるとしているので、知識を羅列して詰め込むのではなく、化石標本を通して様々なイメージを膨らませることを大切にし、そのために文字情報を極力少なくしているということであろう。
本書のタイトルである「IMAGINE BOOK」も、このようなコンセプトから導き出されたものだと思われる。
すばらしい写真の連続
本書の白眉な点は、掲載されている写真の、その切り取り方にあると思う。
化石展示の写真集であれば通常、たとえば1つの化石標本について、全体像が1枚と、特に注目すべき部位をアップで数枚、という程度の掲載となるだろう。それが、本書では、たとえば首長竜の全身骨格標本については、頭骨から頸椎にかけて7ページにわたってアップの写真を掲載している。そのおかげで、実際の展示を肉眼で見るよりも細部まで確認することができる。
実際に現地で展示を見る機会に恵まれたら、本書と実物を見比べてみたいものである。
また、本書には、個々の標本だけでなく、実際の展示室の風景も収められている。
展示室の様子は、非常に広々とした贅沢な空間設計で、窓も大きく開放感がある。(化石に対する紫外線の影響が気になってしまうが、当然その対策も十分に取られているのだろう。)
展示室の写真をよく見ると分かるのだが、主だった標本の周辺にはちょっとした台と、小さな椅子が用意されている。
公式パンフレットによれば、「それぞれの展示台には、メモをとれるスペースを用意しています。イスを自由に動かして学習机として使ってください。」を記載されており、児童・生徒たちはきっとここで化石標本のスケッチをしたりするのだろう。羨ましい環境である。
我々のような学外の者も、その羨ましい環境の一端をこのフォトブックで体験できるのは、非常に嬉しい限りだ。
購入はこちらから。
2024年07月26日
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