書籍紹介
恐竜が登場する前の時代の生き物たち
シゼンノ編集部
「ペルム紀」と言われて、果たしてどれだけの人がピンと来るだろうか。
たとえば、「ジュラ紀」や「白亜紀」などは、恐竜好きであれば(ライトなファンであっても)誰しもが耳にしたことがあるだろうし、それが恐竜の生きた時代を表す言葉だということも認識しているケースが多いように思う。
また、「カンブリア紀」も、テレビ東京系列の『カンブリア宮殿』というビジネス番組の冒頭ナレーションで一時期は毎回紹介されていたことから、ある一定層にはよく知られている名称である。
だが、ペルム紀とは?
そんな、今ひとつマイナー感の否めない時代に焦点を当てた一冊が、今回ご紹介する『前恐竜時代』だ。
ペルム紀とは
ペルム紀とは、地球の歴史を大きく区分する一時代の名称だ。
それがいつ頃を指すのかといえば、約2億9900万年前から約2億5100万年前までだ。とはいうものの、こんな数字だけではイメージがしづらいだろう。
もっと定性的な話をすると、ちょうど恐竜が地上に現れる直前の時代で、陸上にはさまざまな大型の動物(恐竜ではない)が歩き回っていた時代である。
古生物に詳しい人にとっては、背中に大きな帆を背負った動物・ディメトロドンで有名な時代である。
だが、もちろんのこと、その時代に生きた動物はディメトロドンばかりではない。他にも魅力的な動物たちが栄えた時代なのだ。
当時、地球上の大陸はすべて一塊となって超大陸パンゲアを形成していた。
そこにはさまざまな生物が闊歩し、そしてペルム紀末に、史上最大規模と言われる大絶滅を迎える。
本書は、そんなペルム紀の生き物たち、特に陸地の動物たちを中心に詳しく紹介する本である。
ペルム紀ざんまい
ひとくちに「ペルム紀」といっても、5000万年近くも続く長い時代なので、当然ペルム紀の中でも気候の変化もあり、生物種の移り変わりもある。
本書では大まかにペルム紀を前期と後期に分け、それぞれの時代において栄えたさまざまな生物を次々に列挙して紹介している。
大きめの博物館であっても、ペルム紀の生物(特に動物)については、数種類も展示されていれば良い方だろう。それが本書では、索引に記載されているだけでも53種もの生物が紹介されている。
参考までに、本書と同じ著者による「生物ミステリーPRO」シリーズ(通称「黒本」)の『石炭紀・ペルム紀の生物』では、ペルム紀のページが70ページ弱であることを考えると、本書は全214ページすべてがペルム紀というのだから、その贅沢さである(「マニアックさ」とも言えるかもしれない)。
ペルム紀は、その独特の生態系や紀末の大絶滅など、注目すべきところの多い時代にもかかわらず、今ひとつスポットライトの当たりにくい時代であり、本書のようにそれ単独で扱った書籍というのは貴重である。
監修は葛生化石館
本書の監修は、以前本サイトでも詳しく紹介した佐野市葛生化石館により行われている。(参照:佐野市葛生化石館紹介記事 「前編」「後編」)
葛生化石館は、学芸員である奥村さんがペルム紀を専門にする古生物学者のため、ペルム紀に関する展示が国内有数である。
本書の口絵には、国内ではその葛生化石館にしか展示されていない骨格標本の写真も掲載されており、本書のあとがきにもあるとおり「未訪の方、おすすめです」。